LOOP 映像メディア学Vol.6

映像メディア学を追求する東京芸術大学大学院映像研究科では、さまざまなメディアを駆使した制作と教育を行うとともに、映像文化に関わるメディアのあるべき方向性について多様な観点から研究しています。 「LOOP 映像メディア学Vol.6」では、このたびフランスで全活動を収めたアーカイブが刊行されたメディア・アーティスト藤幡正樹のロングインタビュー第2弾を収録、1980年代から90年代末までの経験を語ります。 そのほかに、現在のメディア環境の中で私たちはいかなる主体たり得るのか、〈端末市民〉というキーワードの有効性を再び問う桂英史の論考「到来の思考 端末市民を問い続けること」、さらにはその状況認識を敷衍し芸術のおかれた状況を問う、黒瀬陽平・松井茂・桂英史鼎談ほかの記事を掲載しています。



[目次]

クロニクルその2 技術・メディア・表現―83年〜99年—
【藤幡正樹】聞き手・構成=編集部
八〇年代にコンピュータと出会いアメリカ文化とふれあうようになった後に、慶應義塾大学というアカデミックな場所に移って、ふたたびインターネットを通してアメリカと出会う。それはメディアの問題に発展し、ヨーロッパ側の文化への接点を開く鍵となった。—―日本を代表するメディア・アーティスト、藤幡正樹の中期10年間。

到来の思考 端末市民を問い続けること
【桂英史】
端末市民は単に情報端末とコミュニケーションの理想形に疎外された存在なのか。「通信する動物たち」から政治的に自律した端末市民とはどういう社会関係を樹立できる主体なのか。その問いに対して、ブレヒトやランシエールあるいはネグリ=ハートなどを参照しながら答えてゆくとともに、最 終的には多数多様体としての「弱い主体」 として政治的に自律する端末市民像を描く。

[コンテンポラリー・アニメーション入門]
岡本忠成の仕事
クエイ兄弟、失敗の迷宮 ―スザンヌ・バカン インタビュー
【山村浩二】
アニメーション映像の可能性の最先端を走る短編アニメーション。その作品を観る機会を増やし、基礎知識を共有して、コンテンポラリー・アニメーションの見取り図を描くことを目指して、東京藝術大学大学院映像研究科では、世界的に「いま」を象徴する作家の作品の鑑賞を中心に、講義を公開で行っている。

[鼎談]
批判的芸術と主体をめぐって 端末市民が演じる使役と知覚
【黒瀬陽平+松井茂+桂英史】
「脱構築」という言葉 を「解体」寄りに理解すると、これまで戦後の知というのはやはり解体ということを一生懸命やってきたわけです。ところがを一つ例にしてもわかるのは、ある種のテクノロジーの登場によって、何も考えてない連中によって、いとも簡単に解体がなされてしまうということです。」(=黒瀬陽平)
「簡単に言ってしまえば、磯崎さんには憧れのモデルをつくっては壊すという面白さがあるんです。それはきわめて知的でスリリングなメソッドだけど、そこを批判して相対化できる人がいないのは言説としては貧しいと思う」(=桂英史)
「一九七〇年のお祭り広場こそが、未だに分析に価するものではないか」(=松井茂)


『アニメーションブートキャンプ』の挑戦 持続・発展する産学官連携の一事例
【布山タルト】

『ファッツァー』試論
【ハンス=ティース・レーマン/林立騎訳】

社会契約の結び直しとしての演劇
【林立騎】


[研究ノート]「移動する撮影者」という制作手法について【玄宇民】
[テクニカルノート]コンピュータによる描画法の誕生と現在【牧奈歩美】
[研究ノート]core of belles 2014年12ヶ月連続公演『怪物さんと退屈くんの12ヶ月』【池田武史】
[論文]写真の概念と書画・浮世絵【松浦昇】

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