幸福書房の四十年 ピカピカの本屋でなくちゃ!

なぜ「幸福書房」に行くと読みたい本が見つかるのか? その秘密を店主・岩楯幸雄さんが余すところなく語る。 本屋を始めるまで。開店。本のこと。資金繰り。棚のこと。 取次、出版社、そして、林真理子をはじめとする著者やたくさんのお客さんたちとの出会い。 営業時間は元日以外の364日朝の8時から夜の23時まで。 けらえいこ、平松洋子、石田千、吉田篤弘などさまざまな人が愛した代々木上原駅前書店「幸福書房」の40年。


 平日3人でお店を長時間回すとなると、かなり変則的な生活になります。
ある一日です。私は朝6時半に家を出ます。南長崎の自宅から山手通り沿いを約1時間かけて自転車で出勤。妻はバスや電車で店に向かい、店の近所に住む弟も出勤し大体7時過ぎに開店準備をします。
開店準備はまず、梱包から荷ほどきをして並べます。弟は弟で書籍の梱包の荷ほどきをします。その後、弟はトーハンの店売へ仕入れに向かいます。
私たちは8時頃まで荷ほどきを続けたあと、妻が握って来てくれたおにぎりを2人で食べます。それが終わったらようやくシャッターを開けて開店となります。
開店したあとも作業はまだまだ続きます。雑誌をテントの下の店頭に並べる作業が大体9時半ごろまで続き、やっと綺麗な本屋になるのです。
そこから、妻は1時間昼寝をします。少し早い昼寝です。その間は私が店番をします。そうこうしているうちに、11時半頃、弟が仕入れから戻って来て、書籍を並べ始めます。それが終わったら、今度は私の昼寝の番です。昼寝の前に、妻が作ってくれたお弁当を食べて、1時間ほど昼寝をとります。その間の店番は、妻と弟がしてくれます。……こうして、改めて文字にすると、まあ、よく昼寝をしているなあと思います。寝てばっかりです。(本文より)


目次
はじめに

文芸誌を毎日4時間
母の決断
28歳、幸福書房開店
店売の殺気
開店当初の資金繰り
本のサイズと棚
お客様の顔を浮かべる
3年の我慢
弟の冷静な目
ピカピカじゃないとね
文庫本を考える
書店経営の実際
私たちの働き方
こんな幸せはない
プロ対プロの闘い
2人の社員
林真理子さんのこと
20年前の本屋と今
まだ終わりません
ブックカバーに教わる
一旦、さようなら

おわりに



岩楯幸雄(いわだて・ゆきお)
1‌9‌4‌9年、東京都江戸川区生まれ。電子部品製造メーカーに勤務ののち、1‌9‌7‌7年幸福書房を開店。40年間、朝8時から夜23時まで、ほぼ年中無休で地元の人のみならずたくさんの本好きに愛される書店を営む。
販売価格
1,375円(税125円)
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