句集 不純

俳人佐藤文香プロデュース。 山田耕司の第二句集。 変でポップな重低音が秀でた言葉に響く。 現代重要の俳人の最新句集は、 インパクト大にしてマイペースなリズムを刻む。

かつて、小林恭二『実用 青春俳句講座』(ちくま文庫)に最年少で参加した天才青年・山田耕司の第二句集! 一度は俳句から離れていた山田だが、2011年『超新撰21』(邑書林)でふたたび注目され、昨年刊行されたアンソロジー『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』(左右社)では、〈かわいい〉若手俳人の読み解き実況を担当した。今一番脂の乗った俳句作家の一人である。

『不純』から、今日の気分で十句挙げてみよう。

ロー石の線路の果てのおはぎもち

面影に天ぷらそばを持たせけり

輪投げの輪かぶりて春を惜しむなり

眼の球はぬれつつ裸ふきのたう

脱がせあふ服は迷彩ほととぎす

みつ豆の叱る側だけ泣きながら

まほろばや手なりに馴らす灰に沖

焚き火より手が出てをりぬ火に戻す

絵日傘の遺品となるは今日ならず

菜の花や地下に便座のあたたまり

滲み出すユーモアが、練れた文体のなかで踊る。BLあり怪談あり、とにかく読み物として面白い。山田の代表作といえば〈少年兵追ひつめられてパンツ脱ぐ〉だが、それに勝るインパクトの作品が満載だ。構成は佐藤文香が担当し、デザインは松田行正氏、表紙は山口晃氏にお願いした。(佐藤文香)


目次
一  ボタンA
二  身から出たサービス
三  目隠しは本当に要らないんだな
四  握手なら手を握れ、手を
五  山田耕司 VS 山田耕司
六  眼球は常に全裸
七  あ、また花束だ。
八  耳に、たぶ。口には、びる。
九  地球のある方が下
十  脱ぎたては柔らかい


山田耕司(やまだ・こうじ)
1967年生 群馬県桐生市在住 俳句同人誌「円錐」編集人

佐藤文香(さとう・あやか)
1985年兵庫県生まれ。池田澄子に師事。第2 回芝不器男俳句新人賞にて対馬康子奨励賞受賞。句集『海藻標本』(宗左近俳句大賞受賞)、『君に目があり見開かれ』、編著『俳句を遊べ!』、『天の川銀河発電所 Born after1968 現代俳句ガイドブック』など。
販売価格
1,650円(税150円)
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