日本社会の変動と教育政策 新学力・子どもの貧困・働き方改革

現代日本の教育政策の全体図 東京大学名誉教授の小川正人(教育行政学)が、「新学力」「子どもの貧困・教育費」「学校・教員の働き方」の3つのテーマから、2000年以降の「教育の構造改革」とも呼ばれる抜本的な教育改革の全体像を解説。バブル崩壊による日本経済の低迷、雇用の不安定化、格差の拡大、長時間労働といった日本社会の変動を捉えた上で、今教育行政で何が問題とされ、何が優先されているのかを丁寧に読み解いていく。

本書で言及される教育の問題点、
◉奨学金3ヶ月以上返還滞納者 17万3000人
◉中学校教員の平均残業時間 約125時間
◉大学入学者のうち25歳以上の割合 1.9%(OECD平均 18.9%)
◉ 国内総生産(GDP)に占める公的教育費(国と自治体の合計)支出の割合が世界で最も低い国の一つ
など


◉目次
はじめに

【第一部 新学力と教育改革】
第一章 二一世紀の新学力
1 小中高生の新学力=「学力の三要素」
2 大学生の新学力=「学士力」
3 OECDのPISA学力調査

第二章 社会経済と学力の変化
1 経済成長が生んだ「知識つめこみ型」教育
2 戦後教育の転換点
3 バブル崩壊・グローバル化と教育の構造改革

第三章 新学力をめぐる論議
1 OECDのキーコンピテンシー
2 新学力への懸念と可能性
3 主体的で対話的な深い学び

【第二部 「子どもの貧困」と教育支援】
第四章 重い教育費負担と広がる教育格差
1 学校から職業への「間断のない移行」の揺らぎ
2 家庭の教育費負担と格差
3 「子どもの貧困対策推進法」と「子どもの貧困対策大綱」

第五章 教育支援制度の現況と課題
1 義務教育段階
2 高校段階
3 高等教育段階
4 教育格差の是正は可能か

【第三部 学校の働き方改革】
第六章 チームとしての学校
1 「個」よりも「集団」のための学校教育
2 「個」に対応する「チームとしての学校」
3 「チームとしての学校」への批判
4 「チームとしての学校」構築の課題

第七章 教員の長時間勤務の改善
1 過労死ライン超えの長時間勤務
2 なぜ長時間勤務が生じるのか—給特法を中心に
3 学校・教員の業務の明確化・適正化
4 時間外勤務を縮減できるか
5 「働き方改革」のゆくえ

おわりに
参考文献


著者プロフィール
小川 正人(おがわ・まさひと)
1950年生。放送大学教授、東京大学名誉教授、教育学博士。
専門:教育行政学。東京大学大学院教育学研究科教授を経て、2008年4月から現職。

<主要著書>
単著:『教育改革のゆくえ』(ちくま新書)、『市町村の教育改革が学校を変える』(岩波書店)、『現代の教育改革と教育行政』(放送大学教育振興会)、『戦後日本教育財政制度の研究』(九州大学出版会)
編著・共編著:『新基本法コンメンタール 教育関係法』(日本評論社)、『改訂 ガイドブック教育法』(三省堂)、『日本の教育改革』(放送大学教育振興会)、『改訂版 教育行政と学校経営』(放送大学教育振興会)、『分権改革と教育行政』(ぎょうせい)、『合併自治体の教育デザイン』(ぎょうせい)、等
翻訳:『日本の教育政策過程』(レオナード・ショッパ著 三省堂)
編修:『解説 教育六法』(各年度版 三省堂)

<社会的活動>
政府の規制改革委員会、教育再生懇談会(福田・麻生内閣)、文部科学省・第6期〜第9期中教審副会長、同・初等中等教育分科会長、同・学校における働き方改革特別部会長、東京都足立区教育委員会・教育委員長、教育委員(2012年4月〜2016年3月)等、政府および地方自治体の各種審議会や、日本教育行政会長(第15期:2007年10月〜2010年9月)、日本学術会議連携会員(2011年10月〜2017年9月)等、学会等の各種役職を歴任。
販売価格
1,980円(税180円)
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