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詩・短歌・俳句・川柳
狂狗集 Mad Dog Riprap
来週といふ言葉はもつとも手軽な希望 椅子から転げて子犬がそのまま眠つてる 「光あれ!」と叫んで懐中電灯ともす小学生 詩人・比較文学者・翻訳家・エッセイスト。 本と読書を愛する人を魅了してきた管啓次郎の新境地は、 不思議なリズムとこころほどける一行詩!
自由律俳句を思わせる一行詩のめくるめく連続。
クレイジーな犬の想像力の旅を、心ゆくまで味わえる一冊。
ページをめくるたび、ぼくらの足は軽くなり、心は自由になる!
朝が歩く明るい雨にぬれてゆく
犬の仔や虚空の徘徊永遠軌道
島々の意図縞の思想の布の糸
清少納言?夢なき旅路の未知の美女
想像域に猿を泳がせ川下り
夕方を崇めて千年夜を待ち
リスボンや栄華の果てに鷗あり
航海術海に流れる星拾ひ
再起せよ世界はきみを待つてゐるかも
ある日、古い本の遊びページに書きつけていたセンテンスの切れ端を、そのままアイウエオ順にしたがって続けてみた。俳句には別にならなくていいので一行詩だと思ってください。いくつか、自分の心にひさしい以前から住んでいたイメージが浮上してきた。年齢的に世界との別れがだんだん近づいて(それは避けがたいことだから)その前にそうしたイメージに火を灯しておけば意味がなくはないだろうと思うようになった。なぐさめを得る人も少しはいるだろう。おもしろいと思えば、つかのま気持ちが明るくなるだろう。
もって「狂狗」と呼び、四十四狗にて一巻をなす。これを六巻。英語題名には riprap を充てた。護岸工事などのために投げ込まれる捨石のことです。ぼくのイメージにあるのはモンタナ州あたりの標高の高い湖の岸辺に投入され、水面下につづく法面をなしているような石たち。自然物のかけらをもって人工/自然の境 界を画す。その石をたどりながら、水面下の世界へどうぞ。奇妙な緑の光がみたす楽園にしばし遊び、思い出を持ち帰っていただければさいわいです。(「あとがき」より)
管啓次郎(すが・けいじろう)
1958年生まれ。詩人、比較文学者。これまでの詩集に『数と夕方』、地・水・火・風の四大元素を主題とした『Agend’Ars』『島の水、島の火』『海に降る雨』『時制論』4部作(いずれも左右社)がある。各地での招待朗読や詩祭への参加のほか、「朗読劇銀河鉄道の夜」の活動を続けている。主な著書に『コロンブスの犬』『狼が連れだって走る月』(いずれも河出文庫)、『本は読めないものだから心配するな』『ストレンジオグラフィ』(いずれも左右社)、『斜線の旅』(インスクリプト、読売文学賞)、小池桂一との共著『野生哲学』(講談社現代新書)、『The Dog Book』(NOHARA)のほか、翻訳書多数。明治大学理工学部教授(批評理論研究室)、理工学研究科総合芸術系PAC(場所、芸術、意識)プログラム教授。
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