マーク・フィッシャー最終講義 ポスト資本主義の欲望

2017年1月に逝去したイギリスの批評家マーク・フィッシャー──『資本主義リアリズム』で世界に絶望的な衝撃を与えた著者による、最後の言葉

ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジで行われた最終講義を書籍化。
社会主義、コミュニズム、カウンターカルチャーはなぜ失敗したのか。
資本主義のオルタナティヴは本当に存在しないのか。
ポスト資本主義の世界における「欲望」と、左派加速主義が示そうとした資本主義のその先……
マルクス、フロイト、マルクーゼ 、ルカーチ 、リオタール 、ドゥルーズ&ガタリを架橋しつつ、学生たちの対話から、現代のディストピアから脱出する道を探る。

フィッシャーは資本主義を乗り越えた先を指し示した。だから赴こう、私たちはそこへ── 木澤佐登志
「カウンター」が存在しえない世界に「カウンターカルチャー」をいかに思い描くか。マーク・フィッシャーが歩んだ細く壊れやすい思考の道が途絶えたこの場所から、私たちの新たな探索は始まる。 ── 若林恵

各講義で取り上げられる内容
◆第1講:アレックス・ウィリアムズ−ニック・スルネック、ポール・メイソン、ギブソン・グラハムの考え/左派(左翼)のメランコリー/左派加速主義の再解釈/非資本主義的な経済モデル
◆第2講:マルクーゼ 『エロス的文明』/マルクーゼ のフロイト&マルクス解釈/労働者の死への衝動(欲動)/エレン・ウィリスとカウンターカルチャー/コミューンの失敗と「家庭リアリズム」
◆第3講:ルカーチ 『歴史と階級意識』/階級意識の立ち上げ/ブルジョワジーの限界とプロレタリアートの可能性/ハートソック『あるフェミニズム的立場』/
◆第4講:ジェファーソン・カウィー『ステイン・アライブ 1970年代と労働者階級最後の日々』/労働者たちの運動の失敗──30年代と70年代の関係/ニクソンを支持した労働者階級/トランプが操作した「階級意識」
◆第5講:リオタール『リビドー経済』とマルクス解釈/原始主義に対する批判/リオタール と『アンチ・オイディプス』との比較/資本主義の外部は存在しない


目次
テキストについての注記

第1講 ポスト資本主義とは何か?
第2講 「ほとんど想像もつかない規模の社会的・心理的革命」 
    予兆としてのカウンターカルチャーボヘミアン
第3講 階級意識から集団意識へ
第4講 組合の力とソウルの力
第5講 リビドー的マルクス主義

編者解説 悲惨な月曜の朝はもうたくさんだ マット・コフーン
訳者解説 大橋完太郎

付録1 講義シラバス
付録2 トラックリスト「悲惨な月曜の朝はもうたくさんだ」 


マーク・フィッシャー(Mark Fisher)
1968年生まれ。イギリスの批評家。ウォーリック大学で博士号を取得した後、英国継続教育カレッジ、およびゴールドスミス・カレッジ視覚文化学科で客員研究員・講師を務める。自身のブログ「k-punk」でカルチャーや音楽を通じて、社会に対して鋭い眼差しを投げかけ、熱狂的な読者を獲得した。
ヨーロッパで広く注目された『資本主義リアリズム』(堀之内出版、2018/ 原著: John Hunt, 2009)のほか、著書に『わが人生の幽霊たち―うつ病、憑在論、失われた未来』(Pヴァイン、2019/ 原著:Zero Books, 2014)、The Resistible Demise of Michael Jackson(2009)、The Weird and the Eerie(2017)がある。2017年1月逝去。

大橋完太郎(おおはし・かんたろう)
1973年生まれ。神戸大学大学院人文学研究科教授。東京大学大学院超域文化科学専攻表象文論コース博士後期課程修了。博士(学術)。専門はフランス哲学(美学・感性論)、表象文化論。
著書に『ディドロの唯物論』(法政大学出版局、2011)、編著に『他者をめぐる人文学 グローバル世界における翻訳・媒介・伝達 Adaptation, Mediation and Communication of Otherness in a Globalizing World: Perspectives from Japan』(トーマス・ブルックと共編、神戸大学出版会、2021)、訳書にリー・マッキンタイア『ポストトゥルース』(人文書院、2020)、ジャック・デリダ『スクリッブル』(月曜社、2020)など。

マット・コフーン(Matt Colquhoun)
ライター、写真家。著書にEgress: On Mourning, Melancholy and Mark Fisher がある。ブログ:xenogothic.com
販売価格
2,970円(税270円)
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