家族のおわり、心のはじまり

虐待や暴力、学校や職場に通えなくなること、さまざまな身体症状や精神症状。
自分自身の能力や発達への疑問や不安、行き詰まり。
そんな心理臨床の現場で出会うさまざまな課題に、
家族は必ず大きな役割を果たしている。

そもそもいま、この現代の都市生活のなかで、家族とは何なのだろう。
面接室を離れ、故郷や自然、そして自分自身の家族の風景をたずねながら、
臨床心理学者たちが現代社会の心性を探る。
現代ユング派を代表する碩学W・ギーゲリッヒ氏の心理学の精髄を伝える論文「神を信じない時代における神々へのもてなし フィレモン・ファウスト・ユング」、
ならびに本書オリジナル原稿、執筆者たちとの質疑応答「家族を巡って W・ギーゲリッヒとの対話」を掲載。


私の記憶のなかには、家族の生成と、家族の崩壊の両方が刻まれている。それは時代の社会状況や経済状況の影響を受けながら進んでいったもののように思うが、その一方でそもそも家族とは、生成と崩壊のあいだにあるようにも感じられる。おそらく私は、世に典型的な生成と喪失を感じているだけで、家族や社会や共同というものは、そのようにいつも生成と崩壊のあいだにあり、いまという現実の取り組みのなかにだけ存在しているのだろう。
(猪股剛「おわりに」より)
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