エレメンタル 批評文集

おれは何者でもない、そんな否定から出発し、
広大なる風景をかたちづくった詩人フェルナンド・ペソア、
英語というパトリアを持ちながら異郷に迷い、
イタリア語、フランス語、スペイン語に挑んだヘミングウェイ、
師匠ジョイスに劣らぬ語学のひとであり、
知られざるメキシコ詩の翻訳者だったサミュエル・ベケット、
現代のシステムのはずれへと歩みつづける稀有なる旅人、写真家津田直、
書くことと読むことにおいて、無数の線をつなぎ、
解きほぐしてゆくレベッカ・ソルニット。

海と島影、山々とマングローブが織りなす小さな海域が響かせる世界文学をいち早く論じ、
文学と翻訳の可能性と自由とを描いてきた詩人・比較文学者・翻訳家、管啓次郎の批評文集成!

「世界の広大さと深みを再発見する仕事は、手つかずでぼくらに残されている。」

世界化した物質流通と惑星化した情報流通を背景に、歴史上かつてない地平に直面したコスモポリタニズムが、新たな市民性(シヴィリティ、丁寧さ、「正しさ」)を手に入れるための唯一の方法は、これまで回路に乗ることのなかった種類の文学=翻訳の経験をつむこと以外にはないと、ぼくは思う。(本書より)
販売価格
3,300円(税300円)
購入数